体調のことを職場でどう言うか|生理や更年期が言いにくいままになる理由
つらくても大丈夫ですと答えてしまう。個人の遠慮の問題として片づけられがちな言いにくさを、制度と職場の側から見直します。
説明を省いた結果、大丈夫ですになる
本当は座っているのもつらいのに、聞かれると大丈夫ですと答えてしまう。原因を具体的に言えば話が長くなるし、言った後にどう扱われるかも読めない。だから省いた形で答え、そのまま一日が終わる。
この場面で起きているのは、我慢強さの発揮ではなく、説明のコストが高すぎるという状況です。伝えるために必要な手間とリスクが、伝えることで得られる楽さを上回っている。だから黙るほうが合理的になってしまいます。
ここでは、その言いにくさを個人の性格の話にせず、制度と職場の側から見直してみます。
言いにくさは、性格の問題ではない
体調不良の理由を言うと、評価や配置に影響するのではないかという懸念がついてまわります。この心配は、実際に起きたことがあるかどうかにかかわらず、可能性として残っているだけで人を黙らせます。
さらに、体のことを話すと相手が気まずそうにする、という経験も影響します。相手を困らせないために言わない、という配慮が働くと、当事者の側が説明の負担も配慮の負担も両方引き受けることになります。
つまり、話しにくさは話す側の勇気の不足ではなく、話した後に何が起きるか予測できない環境から生まれています。変えられる部分は、環境の側にもあります。
制度としてあるもの、ないもの
体調に関わる休みは、制度としてあるものとないものが混ざっています。あるはずのものが使われていない場合と、そもそも制度が存在しない場合とでは、取れる手段が変わります。
下の表は、日本の職場でよく話題になるものを大まかに並べたものです。運用は勤務先によって違うので、就業規則で実際の扱いを確認するのがいちばん確実です。
| 区分 | 位置づけ | 現場で言われていること |
|---|---|---|
| 生理休暇 | 労働基準法に定めがあり、請求できる仕組みがある | 有給か無給かは勤務先ごとに異なり、取得は広がっていないと言われる |
| 年次有給休暇 | 法定の休暇。理由を細かく説明する義務はない | 理由を書く欄があるため、体調と書くにとどめる人が多い |
| 更年期に関する休暇 | 更年期に特化した法定の休暇制度はない | 有給や病気休暇、時差出勤などで対応する形が中心 |
| 時差出勤・在宅勤務 | 勤務先ごとの制度。法定ではない | つらい時間帯を避けられるため、休む以外の選択肢になりうる |
| 産業医・健康相談窓口 | 一定規模の事業場では産業医の選任が必要とされる | 上司を通さずに相談できる経路として使われることがある |
誰に言うかを、先に決めておく
職場で伝える相手は、一人である必要はありません。当日の業務を調整する人と、体調の背景まで知っておいてほしい人が同じでないことはよくあります。分けておくと、毎回すべてを説明せずに済みます。
直属の上司に言いにくい場合も、人事や産業医、健康相談の窓口といった経路が用意されていることがあります。上司を飛ばすことに抵抗を感じるかもしれませんが、体調の相談はもともとそのために置かれている窓口です。
誰にも言いたくない、という選択も含めて構いません。ただ、休みが必要になったときに連絡する先だけは、あらかじめ決めておくと当日が楽になります。
症状の説明と、必要な調整を分ける
伝えるときに難しいのは、症状をどこまで話すかです。細かく話すほど理解されると考えがちですが、実務上は逆で、必要な調整だけを短く伝えるほうが早く通ります。
体調不良で、今日は外回りを代わってもらえると助かります。この形であれば、症状の中身に踏み込まずに必要なことだけが伝わります。相手も、判断すべきことがはっきりしているので動きやすくなります。
背景まで共有したい相手には、別の機会に話せばよいものです。その場で全部を果たそうとしないほうが、どちらの負担も小さくなります。
受け取る側にできること
同僚や管理職の側にいるときにできるのは、理由を掘り下げないことと、次にどうするかだけを確認することです。大丈夫かと聞くより、何を代わればいいかを聞くほうが、相手は答えやすくなります。
また、体調に関する話題を特別扱いしないことも効きます。誰かが休むたびに事情の説明が求められる場では、説明が要らない休み方が存在しないことになります。理由を問わずに回る仕組みがあるほど、言いにくさは減ります。
配慮のつもりで担当を外す、負荷の低い仕事に移す、といった対応は、本人の希望と一致していないと不利益として受け取られます。何を変えるかは、本人に確認してから決めるほうが確実です。
つらさが続くときは、職場の外にも道がある
職場での伝え方を工夫しても、つらさそのものが軽くなるわけではありません。毎月決まって動けなくなる、以前と比べて不調が長引くようになった、日常生活に支障が出ている。こうした状態は、我慢の量を増やして対応するものではないと言われています。
婦人科では、症状や年齢に応じた相談ができます。仕事に支障が出ていることを伝えると、それを前提にした話ができることもあります。受診の際は、いつから、どのくらいの頻度で、どんなときに困っているかを短くメモして持っていくと話が早くなります。
言えるようにするまでの距離
職場の空気は、一人の言い方で変わるものではありません。それでも、連絡先を決めておく、就業規則を一度読んでおく、必要な調整だけを言う形をつくっておく。この程度の準備でも、当日の消耗はかなり違います。
言わないと決めることも、選択のひとつです。大事なのは、言えないから黙るのではなく、自分で選んでそうしている状態にしておくことのほうかもしれません。