痛いのは慣れの問題ではない|性交痛と呼ばれるものを、ひとりで抱えないために
痛いのに、その場では言えないまま終わる。慣れれば消えるものとして扱われがちな痛みを、原因の候補と相談先ごとに整理しました。
その場では言えないまま終わってしまう
痛みがあっても、終わってから言えばいい、と先送りにして、結局そのまま流れてしまう。相手の気持ちを削りたくない、雰囲気を止めたくない、大げさに思われたくない。そういう理由が重なって、痛みだけが記録されないまま残っていきます。
痛みは、我慢の量で評価されるものではありません。声に出されなかった痛みは「なかったこと」になり、次も同じ状況が繰り返されます。まずは、そこで起きていることに名前をつけるところから始めます。
ここでは特定の原因を断定したり、対処法を指示したりはしません。どんな背景が語られているのかを並べて、どこに相談すればよいかを見つけやすくすることが目的です。
「慣れれば平気になる」という言い方
痛みの話をすると、そのうち慣れると返されることがあります。回数を重ねれば消えるもの、という前提が、この領域には根強くあります。けれど痛みは、体が何かを知らせている信号として扱われるのが基本です。
慣れることで実際に変わるのは、痛みそのものではなく、痛みを感じても言わないでいる態度のほうかもしれません。それは解決ではなく、記録が止まっただけです。
痛みが続いているなら、それは相談していい種類のできごとです。回数や年数を理由に「今さら」と考える必要はありません。
いつ・どこが痛むかで分けてみる
痛みをひとまとめに考えていると、伝えるときにも「なんとなく痛い」としか言えません。いつ痛むのか、どのあたりが痛むのかを分けておくと、自分の中の整理にもなりますし、相談したときに話が早く進みます。
下の表は、よく語られるパターンを大まかに並べたものです。当てはめて原因を決めるための表ではなく、伝えるときの言葉を見つけるための手がかりとして見てください。
| 痛みのタイミング | よく語られる背景の例 | 相談先の目安 |
|---|---|---|
| 入口のあたりで痛む | 緊張やこわばり、うるおいの不足などが挙げられます | 婦人科・産婦人科 |
| 奥のほうに響くように痛む | 婦人科系の疾患が関わる場合があると説明されます | 婦人科・産婦人科(早めの受診) |
| 終わったあとに残る・しみる | 摩擦や炎症、皮膚のトラブルなどが挙げられます | 婦人科、皮膚の症状なら皮膚科も |
| いつからか、以前より痛むようになった | 産後・授乳期・年齢によるホルモンの変化が語られます | 婦人科・産婦人科 |
| 痛みより先に強い不安や緊張がくる | 過去の経験や心理的な要因が関わる場合があります | 婦人科のほか、心理の専門窓口 |
緊張と痛みは、輪になりやすい
痛かった経験があると、次の場面では体が先に身構えます。身構えた状態はこわばりを生み、こわばりはまた痛みにつながる。この輪ができてしまうと、原因がどこにあったのか本人にも分かりにくくなります。
だから「気持ちの問題では」と言われても、それは気の持ちようで消せるという意味にはなりません。体の反応として起きていることなので、意志の力で押し切ろうとするほど輪は強くなります。
止めやすいのは、痛みが出たときに続けないという一点です。中断しても構わない、と自分に許可を出しておくだけで、身構える強さは変わっていきます。
からだの状態は、時期によって変わる
うるおいや粘膜の状態は一定ではなく、月経周期、産後や授乳期、更年期前後、服用している薬、疲れや睡眠の状態などによって変わると言われています。以前は問題がなかったのに最近だけ痛む、ということも起こります。
変化そのものは異常ではありませんが、痛みとして表れているなら、放っておくものでもありません。市販のものでしのげる範囲なのか、受診したほうがよい範囲なのかは、自己判断が難しいところです。
気になる状態が続くときは、婦人科で「最近こういうふうに変わった」と伝えるのがいちばん早い道になります。
相手に伝えるときの、短い言葉
その場で長く説明するのは難しいものです。だから、あらかじめ短い言い方を決めておくほうが現実的です。「痛いから、いったん止めたい」だけで十分に通ります。理由の説明も、原因の分析も、その場でする必要はありません。
止めたことが相手への拒否として伝わるのが怖い、という気持ちが出てくることもあります。そこは、後から一度だけ言葉にしておくと収まりやすくなります。痛みがあったこと、嫌いになったわけではないこと。この二つだけで足ります。
止めると言ったのに続けられる、痛いと伝えても取り合ってもらえない。そういう相手であれば、それは痛みの問題ではなく、関係の問題として別に考える必要があります。
婦人科で、どう切り出すか
受診をためらう理由の多くは、何をどう言えばいいか分からないことにあります。実際には、「性交時に痛みがあるので相談したい」という一文で用件は通ります。恥ずかしさを乗り越えて詳しく話す準備をしてから行く必要はありません。
伝えられると役に立つのは、いつ頃からか、どのあたりが痛むか、他に変わったことがあるか、の三点です。スマートフォンのメモに一行ずつ書いて持っていくだけでも、話がずいぶん楽になります。
婦人科のウェブサイトに「女性ヘルスケア外来」「更年期外来」「性の相談」といった表記があるところは、この種の相談に慣れていることが多いと言われています。選ぶときの目安のひとつになります。
我慢を前提にしない
痛みを我慢して続けることが、相手を大事にすることだと考えなくていい場面はたくさんあります。痛くない状態でいられるかどうかは、自分の体をどう扱うかという話であって、相手への態度の話ではありません。
今日すぐ原因が分からなくても構いません。痛みがあると自分で認めること、止めていいと決めておくこと、相談できる場所をひとつ調べておくこと。動き出しとしては、それで十分です。