香り・音・肌ざわりで整える|五感から始めるセルフケアの組み立て方
気持ちを切り替えたいのに、考え方のほうは変えにくい。そんなときは入ってくる刺激を変える手があります。五感を切り口にした環境の整え方をまとめました。
気持ちを直接変えようとすると、難しい
落ち着かない、集中できない、なんとなく気が張っている。そういうとき、多くの人はまず考え方のほうを変えようとします。気にしないようにする、切り替える、前向きに捉える。けれど状態が悪いときほど、その操作は難しくなります。
一方で、身のまわりの環境は、気分より扱いやすい対象です。明かりを落とす、音を変える、手に持つものの温度を変える。入ってくる刺激を変えると、気分のほうが後からついてくることがあります。
五感は「入力」だと考えてみる
私たちは一日中、匂い・音・光・肌ざわりを受け取り続けています。そのほとんどは意識にのぼりませんが、受け取っていないわけではありません。理由の分からない落ち着かなさが、じつは照明が明るすぎるだけ、ということもあります。
セルフケアというと、時間を確保して何かをすることだと考えられがちです。けれど入ってくるものを選び直すだけなら、数十秒で済みます。忙しい時期ほど、こちらのほうが現実的です。
感覚ごとに、できることを並べてみる
全部をそろえる必要はありません。今日いちばん気になっている感覚を一つ選んで、そこだけ変えてみるのが現実的なやり方です。
| 感覚 | 整いにくくなる状態 | 試しやすいこと |
|---|---|---|
| 嗅覚 | 同じ空気がこもったまま | 窓を開ける、香りを一つだけ置く |
| 聴覚 | 話し声や通知音が断続的に入る | 耳をふさぐ、一定の音を流す |
| 触覚 | 手足が冷えている、締めつけがある | 温める、ゆるい服に着替える |
| 視覚 | 画面が近い、明るさが強く均一 | 光量を落とす、遠くを見る |
| 温度・味覚 | 冷たいものだけを流し込んでいる | 温かい飲みものをゆっくり飲む |
嗅覚は、切り替えの合図として使いやすい
香りは記憶や気分と結びつきやすい感覚だと一般に言われています。特定の香りを「ここから休む時間」の合図として繰り返し使っていると、その香りをかいだだけで体勢が切り替わりやすくなることがあります。
種類を増やす必要はありません。むしろ一つに絞ったほうが、合図としては働きます。香りそのものの良し悪しより、「いつ使うかを決めているかどうか」のほうが大きい部分です。
聴覚 — 静けさが合う人と、合わない人がいる
休むときは静かなほうがいい、とは限りません。無音になると、かえって自分の考えごとの声が大きく聞こえてしまう人もいます。その場合は、雨音や生活音のような、変化の少ない一定の音のほうが落ち着くことがあります。
逆に、言葉が乗っている音は、聞き流しているつもりでも頭が処理を続けます。休息のための音なら、歌詞や会話の少ないもののほうが向いていることが多いようです。
- 通知音を一時的に切る。音の数を減らすだけでも変わる
- 言葉のない音を一つ決めておき、休むときは毎回それにする
- 外の音が避けられない環境なら、耳栓やイヤーマフを試してみる
触覚 — 温度と重さは、あとから効いてくる
手足が冷えていると、それだけで落ち着かない状態が続きます。温かい飲みものを持つ、靴下をはく、湯船に入る。単純なことですが、体の末端の温度は気分の落ち着きと結びつきやすい部分です。
締めつけの少ない服に着替える、肌ざわりの好きなものを一つ手元に置く。触覚は自覚しにくい代わりに、変えたときの差が体に残りやすい感覚でもあります。
視覚と光 — 時間帯で明るさを変える
昼と夜で同じ明るさの部屋にいると、体は今が何時なのか分かりにくくなります。夜は全体の照明を落として手元だけ照らす、朝はカーテンを開けて外の光を入れる。この差をつけるだけでも、一日のリズムはつくりやすくなります。
画面を見続けたあとは、数十秒でいいので遠くを見る時間を挟みます。視線の距離が固定され続けることは、目だけでなく体の緊張とも関わると言われています。
合う組み合わせは、人によって違う
ここに並べたものは、どれも万人に効く手順ではありません。香りが苦手な人もいれば、静かでないと休めない人もいます。試して、合わなければやめる。その判断を早めにできることのほうが、正しい方法を探し当てることより役に立ちます。
そして、環境を整えても、眠れない日や気分の重い日が続くことはあります。数週間以上そうした状態が続くときは、生活の工夫だけで抱え込まず、内科や婦人科、心療内科など、相談しやすいところで一度みてもらってください。